山口百恵は大して売れていなかった説を検証してみた!

前回の記事で『70年代女性アイドルが1970年代に発売した最高売り上げシングルのランキング』を示しましたが、その記事を見て当時のことを知らない人はこう思ったかもしれません。

山口百恵って思ったより売れてないんだ・・・

では、前回示したランキングをおさらいしてみましょう。

順位売上枚数アーティスト曲名発売日
1位155.4万ピンク・レディーUFO1977/12/05
2位134.3万小柳ルミ子わたしの城下町1971/04/25
3位88.7万岩崎宏美ロマンス1975/07/25
4位86.7万太田裕美木綿のハンカチーフ1975/12/21
5位82.9万キャンディーズ微笑がえし1978/02/25
6位66.1万山口百恵横須賀ストーリー1976/06/21
7位60.1万天地真理ひとりじゃないの1972/05/21
8位58.0万アグネス・チャン小さな恋の物語1973/10/25
9位54.2万南沙織17才1971/06/01
10位52.7万桜田淳子はじめての出来事1974/12/05

確かに後年下された評価に比べると山口百恵の順位は低いように感じますし、上位5組との売り上げ差も明らかと言えます。
山口百恵は21歳の若さで引退し神格化された部分があるとは言え、その点を考慮しても違和感を払拭できない人がいるかもしれません。
そこで山口百恵を含む上記ランキングにおける上位10組のシングルレコード売り上げをグラフ化し、以下で中身を精査していきたいと思います。

※横軸がシングルレコードの発売順で縦軸が発売枚数です。
※山口百恵の発売したシングルレコードが31枚(引退後に発売されたシングルは考慮せず)なので、他のアイドルも31枚を基準にグラフを作成しています。

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ピンク・レディー

ミリオン超えが5作という圧倒的な売り上げ枚数を誇るピンク・レディーですが、その下落っぷりも凄まじく、ラストシングルの1つ前に発売された21枚目のシングル『Last Pretender』は、累計売り上げ1万枚にすら届きませんでした。

小柳ルミ子

いきなりミリオン超えという華々しい歌手デビューを飾った小柳ルミ子は、その後も大きな売り上げを誇るシングル曲を発売するものの、29枚目のシングル『恋ごころ』は0.2万枚しか売れないなど、シングル売り上げの下落傾向に歯止めは効きませんでした。

岩崎宏美

2枚目のシングル『ロマンス』が大ヒットした岩崎宏美は、圧倒的な歌唱力を武器に好調な売り上げをキープし、28枚目のシングル『聖母たちのララバイ』で再び大ヒットを果たします。
しかし、その2枚後となる30枚目のシングル『素敵な気持ち』では3.3万の売り上げに留まり、売り上げ枚数の乱高下が目立つ結果となっています。

太田裕美

4枚目のシングル『木綿のハンカチーフ』が大ヒットした太田裕美でしたが、その後のシングル売り上げ下降線を辿り、結婚も重なり25枚目のシングルで一旦音楽活動は休止となってしまいました。

キャンディーズ

キャンディーズのシングル売り上げは、解散前のラストシングルとなった17枚目の『微笑がえし』が最高の売り上げを誇っていますが、これには明確な理由があります。
キャンディーズは解散発表をするまでオリコン1位を獲得したことなかったので、最後にオリコン1位を獲得させてあげようとファンが協力して活動を行ったため、解散発表後に出された2曲、特にラストシングルとなった『微笑がえし』の売り上げが特出して高くなっているわけです。
この特殊事例な1曲を除くと、キャンディーズの売り上げランキングは大幅に下がってしまうことは説明するまでもないでしょう。

※解散後に出されたシングルは考慮していません。

天地真理

国民的アイドルとまで称された天地真理は、7枚目のシングル『恋する夏の日』までは好調な売り上げをキープしていましたが、8枚目シングル『空いっぱいの幸せ』で一気に売り上げが半減。
その後も売り上げは下降線を辿り22枚のシングルで音楽活動は終了となってしまいました。

アグネス・チャン

デビューから好調のシングル売り上げを誇ったアグネス・チャンでしたが、9枚目のシングル『恋人たちの午後』で前作から半減、14枚目のシングル『夢をください』でも前作から半減と目に見える形で売り上げが落ち込み、その後、売り上げが回復することはありませんでした。

南沙織

南沙織のシングルレコード売り上げは、デビュー曲が最高で結婚・引退する際のラストシングルが最低と、もっとも分かりやすい形で下降線を辿りました。
ちなみに8枚目のシングル『カリフォルニアの青い空』の売り上げが低い理由は英語の楽曲だからです。

桜田淳子

山口百恵と同期デビューかつ同い年、更にはデビューのきっかけも同じ(スター誕生!)桜田淳子は、23枚目のシングル『リップ・スティック』まではそれなりに高い売り上げを維持していましたが、それ以降は一気に売り上げが下降していきます。

山口百恵

2枚目のシングル『青い果実』で初ヒットを果たした山口百恵は、以降、引退まで全てのシングルで15万枚以上の売る上げを誇りました。
更に5枚目のシングル『ひと夏の経験』以降は全て20万以上を維持するなど、山口百恵のシングルレコード売り上げは抜群の安定性を誇ります。
この安定性は、CDが握手券と同じ意味になってしまったアイドル以外では女性アイドルとして他に例がなく、上記してきた70年代アイドルと比べても異質の存在と言えます。
80年代アイドルを象徴する松田聖子はシングルレコードで24作連続オリコン1位を獲得していますが、その後は売り上げの振るわなかったシングルもあり、安定性では山口百恵に軍配が上がるのです。

※引退後に出されたシングルは考慮していません。

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解説

前回の記事で示したランキングを見て、山口百恵のことを思ったより大したことがないと感じとった人もいるでしょうが、中身を精査すると山口百恵は高い人気を維持し続けた稀有な存在であることが分かりました。
例えば、70年代女性アイドルで50万枚以上売り上げたシングルレコード数で順位付けすると、以下のように山口百恵の順位は3位まで上昇します。

50万枚以上売り上げたシングルレコードの枚数
ピンク・レディー:10作
小柳ルミ子:6作
山口百恵:5作
天地真理:3作
岩崎宏美:3作
アグネス・チャン:1作
太田裕美:1作
キャンディーズ:1作
小林麻美:1作
桜田淳子:1作
南沙織:1作

更に20万枚以上で区切れば、山口百恵は2位に倍以上の差をつける圧倒的な1位となり、売り上げの安定性が顕著であることが分かるのです。

20万枚以上売り上げたシングルレコードの枚数
山口百恵:27作
ピンク・レディー:13作
岩崎宏美:12作
桜田淳子:12作
小柳ルミ子:11作
天地真理:10作
南沙織:9作
キャンディーズ:8作
アグネス・チャン:7作
高田みづえ:6作
麻丘めぐみ:5作
太田裕美:5作

※山口百恵の引退後の発売曲『一恵』は含まず。
※小柳ルミ子は上記したグラフ以外に『お久しぶりね』が39.7万枚売れている。

もう1つ面白い山口百恵の安定性にまつわる話をしましょう。
2006年8月、サザンオールスターズは山口百恵が30年近く保持していたシングルのオリコンTOP10獲得週数の記録(239週)を更新しました。
サザンオールスターズがデビューしたのは1978年6月ですから、28年以上の歳月をかけて山口百恵の記録を抜いたわけです。
この話を聞いてサザンオールスターズが凄いと思うのは間違いで(凄いことではあるが)、山口百恵の記録が桁違いに凄いことが分かります。
なぜなら、山口百恵の活動期間は8年半しかないのです。
サザンオールスターズですら28年かけないと更新できないような記録を山口百恵はたった8年半で達成しており、更に言えばサザンオールスターズ以外のアーティストたちは、未だに山口百恵が8年半で達成したこの記録を破ることが出来ないでいるのです。
山口百恵はシングルでのオリコン1位を4作しか獲得していませんが、売り上げの安定性は考えられないレベルに達し尋常ではない頻度でオリコンTOP10入りをしていました。

このように売り上げの落ち込みや売れない時期をほとんど経験せずにアイドル活動を走破した人は、日本のアイドル史の中でも僅かしかおらず、山口百恵の人気が一過性ではなかったことが分かります。
それには当然、山口百恵の歌唱力には“実力”が伴っていたという公然たる事実があるものと思われます。

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